低血圧だったのに更年期で急に血圧高め?自律神経とエストロゲンの意外な関係

低血圧だったのに更年期で急に血圧高め?自律神経とエストロゲンの意外な関係

健康診断の用紙を見て、思わず二度見した方はいませんか。「もともと立ちくらみがするくらい低血圧だったのに、なぜ今さら血圧高め?」「要観察ってどういうこと?」と、戸惑いながらこの記事にたどり着いた方も多いかもしれません。実は更年期の世代で、もとが低血圧だった方が突然血圧の上昇を指摘されるのは、決して珍しいことではありません。背景には、女性ホルモンの低下と自律神経の変化が同時に起きているという、更年期ならではの事情があります。この記事では、名古屋の自律神経調整サロンのセラピストとして、更年期で血圧が上がりやすくなる3つのメカニズムと、家庭でできる目安を整理してお伝えします。

更年期で血圧が上がる女性が増えている【データで見る実態】

40代9.4%→50代24.9%→60代36.2%、10年で急増する高血圧有病率

オムロンヘルスケア「更年期高血圧に注意しましょう」によると、女性の高血圧有病率は40代で9.4%、50代で24.9%、60代で36.2%と、年代を追うごとに大きく上昇します。とくに40代から50代にかけては、有病率が約2.7倍に跳ね上がるのが特徴です。

セラピストとして当サロンにお越しになる方を拝見していて感じるのは、「もとが低血圧だった方ほど、急上昇のインパクトに気づきにくい」ということです。これまで「血圧は低めだから大丈夫」と思って暮らしてきた分、上昇のサインを見落としやすく、健診で初めて知って驚かれるケースが少なくありません。

40〜50代女性の45.5%が「更年期高血圧」を知らない

さらにオムロンヘルスケアによる調査(2023年3月7日発表)では、血圧が高いと実感している30〜50代女性650人を対象にした調査で、40〜50代女性のうち45.5%が、更年期になると高血圧になる可能性が高くなることを「知らない」と回答しています。

知らないこと自体が問題なのではありません。むしろ、知って備えることができれば、過剰に不安にならず、必要なときに必要な行動が取れるようになります。健康診断の数値に動揺している今こそ、知るタイミングなのかもしれません。

なぜ更年期で血圧が上がるのか/3つのメカニズム

更年期の血圧上昇には、エストロゲン低下を起点とした3つの経路が関わっています。一つずつ整理していきます。

経路①|エストロゲン低下 → NO(一酸化窒素)産生低下 → 血管が広がりにくくなる

エストロゲンには、血管を広げる作用や抗酸化作用など、血管をしなやかに保つ働きがあります。健康長寿ネット「性差医療 男女の更年期障害」でも、エストロゲンには抗動脈硬化作用があり、閉経後はその恩恵が薄れていくと解説されています。

イメージとしては、ホースの内径が少しずつ狭くなり、同じ量の水を流すのに圧力が必要になる状態に近いと言えます。血管そのものが広がりにくくなるため、これまでと同じ生活をしていても、血圧が自然と上がりやすくなるのです。

経路②|血管内皮の働きが弱まる→塩分・水分が体に溜まりやすくなる

実は、経路①で出てきたNO(一酸化窒素)には、もう一つ大切な働きがあります。先進医療.net「働く女性の難敵、閉経期高血圧に挑む」では、「血管内皮は、血管の柔軟性の維持にとても大切な働きをしているほか、体内のナトリウム(食塩の成分)の体外への排泄を促す一酸化窒素を産生している」と解説されています。

つまり、エストロゲンが減って血管内皮の働きが弱まると、ナトリウムが体内にとどまりやすくなり、血液量が増えて血圧が上がりやすくなるのです。

更年期に入って「夕方になると靴がきつい」「以前より体重が落ちにくい」と感じる方は、このむくみ傾向とセットで血圧が上がっているケースもあります。普段の食事で気づかないうちに塩分が多くなっていないか見直すことも、更年期ならではのセルフケアの一つです。隠れ塩分とむくみの関係については、更年期世代の隠れ塩分とむくみの記事も参考になさってください。

経路③|視床下部の混乱 → 自律神経(交感神経)優位 → 血圧変動が大きくなる

オムロン「更年期にはどうして自律神経失調症のような症状が起こるのですか?」で解説されているように、女性ホルモンの分泌を司る視床下部は、同時に自律神経の中枢でもあります。エストロゲンが急激に減ると、視床下部が混乱し、自律神経のバランスも乱れやすくなります。さらに、閉経で相対的に男性ホルモンの割合が増えることで、交感神経の働きが活発化することも、先進医療.netで指摘されています。

この経路で問題になりやすいのは「日中の血圧の高さ」よりも「血圧変動の大きさ」です。緊張やストレスで一気に上がったり、夜中に下がりきらなかったりと、振れ幅が大きくなることが心臓や血管への負担につながります。朝起きたときに頭が重い、夜中に動悸で目が覚めるといった症状がある方は、朝の頭痛と夜間高血圧、自律神経の関係も合わせてお読みください。

【ケーススタディ】Bさん(49歳・経理職)の事例

当サロンにいらっしゃったBさん(49歳・経理職)の事例をご紹介します。Bさんはもともと上が95前後の低血圧で、若い頃から立ちくらみに悩まれていた方です。経理のお仕事で繁忙期は残業が続き、座っている時間が長い生活。半年ほど前から寝つきが悪くなり、肩こりが慢性化していました。

そんなBさんが健康診断で指摘されたのが、上138/下88という数値でした。「私はずっと低血圧側の人間だと思っていたので、まさか自分が血圧高めと言われるなんて」と、初めての経験に動揺されてご来店されました。

セラピストとしてBさんのお話を伺うなかで見えてきたのは、もとが低血圧だった方ほど、上昇のインパクトに身体が驚いている状態だということでした。Bさんに限らず、共通して見られたのは「家庭血圧を測ったことがない」「命の母を最近飲み始めたばかり」「夜中に目が覚めることが増えた」というパターンです。

当サロンでは、自律神経のバランスを整える方向のケアを継続していただいています。施術後は肩や首まわりの緊張がゆるみ、夜の眠りが少し変わってきたとお話しいただくことが増えました。Bさんご自身も家庭血圧を毎日記録するようになり、ご自身の身体の傾向を客観的に把握できるようになってきています。

※個人の事例であり、効果には個人差があります。

命の母・エクオールはどう関係するの?すでに試している方への整理

「血圧が高めと言われてから、命の母やエクオールを試し始めた」という方もいらっしゃるかもしれません。それぞれの位置づけを整理しておきます。

命の母A:効能効果に「血圧異常」が含まれる第2類医薬品

小林製薬「命の母A」製品情報によると、効能・効果には「更年期障害、更年期神経症、血の道症、のぼせ、生理不順、生理異常、生理痛、肩こり、冷え症、肌荒れ、めまい、耳鳴り、動悸、貧血、にきび、便秘、ヒステリー、帯下、産前産後、下腹腰痛、血圧異常、頭痛、頭重」が挙げられており、「血圧異常」も含まれています。

ただし、これは降圧薬ではなく、更年期障害に伴う諸症状を緩和することを目的とした生薬製剤です。「飲めば血圧が下がる薬」ではなく、「更年期の不調全体を整えることで、結果として血圧の安定にも寄与する」という位置づけと理解しておくと、過度な期待や落胆を避けられます。更年期の整え方の全体像については、更年期の調整法 総論もご参照ください。

エクオール/イソフラボン:NO産生を介した血管へのサポート

イソフラボン倶楽部「動脈硬化 降血圧│イソフラボン」では、大豆イソフラボンが大動脈の内皮細胞に対して一酸化窒素(NO)の産生を促し、血管をしなやかにする可能性が紹介されています。エクオールは大豆イソフラボン(ダイゼイン)が腸内細菌によって変換されてできる成分で、イソフラボンよりも強い働きをするとされています。

ここでひとつ知っておきたいのが、大塚製薬「エクオールとは?」によると、イソフラボンを腸内でエクオールに変換できる「エクオール産生者」は日本人の約半数とされ、残りの方はサプリメントなどでエクオールそのものを補う選択肢もある、という点です。ご自身がどちらかを知りたい方は、エクオール産生能のチェック方法の記事も参考になさってください。

「血圧が下がらないから無駄」ではなく、「もともと降圧目的のものではない」ことを理解した上で続けていただくと、更年期全体の体調管理に役立てやすくなります。

家庭血圧計の正しい使い方と「受診すべき数値」の目安

健診で一度高い数値が出ただけで、すぐに高血圧と決まるわけではありません。本当に必要なのは、ご自宅での測定です。

日本高血圧学会ガイドライン2019の基準値

日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」一般向け解説では、診察室での血圧は140/90以上、家庭血圧では135/85以上が高血圧の基準とされています。降圧目標は主な目安として、診察室で130/80未満・家庭で125/75未満ですが、年齢(75歳以上は別基準)や併存疾患により個別に判断されますので、ご自身の目標値は主治医にご確認ください。

健康診断で140/90を超えた数値が出ても、まずは家庭血圧で1〜2週間ほど記録を取ってみることをおすすめします。診察室では緊張で高めに出る方も多いため、自宅でのリラックスした状態の数値が、本来の傾向に近いと考えられています。

朝・夜2回測定/座って1〜2分安静後/同じ時間帯がコツ

家庭血圧は、朝起きてトイレを済ませた後と、夜寝る前の2回、上腕式の血圧計で測るのが基本です。座って1〜2分ほど安静にしてから測り、毎日同じ時間帯で続けると、ご自身の傾向が見えてきます。カフェイン摂取直後・入浴直後・運動直後は避けてください。

まだ家庭血圧計をお持ちでない方は、手首式やスマートウォッチ型ではなく、上腕に巻くカフ式(上腕式) を選ぶのがおすすめです。腕の太さに合うカフサイズかどうかも、購入時にご確認ください。価格帯にこだわらず、まずは一台ご自宅に置くこと自体が、更年期の備えとして大きな一歩になります。

大切なのは「単発の高い数値」に一喜一憂しないこと。1週間の平均値と、変動の幅を見ていく視点が役立ちます。心臓まわりの不調が気になる方には、更年期世代のサンザシと心臓のいたわりの記事もおすすめです。

すぐ受診の目安

家庭血圧で160/100以上の数値が続く場合や、頭痛・めまい・動悸を伴う場合は、早めに内科や婦人科を受診してください。なお、すでに降圧薬を処方されている方は、ご自身の判断で中断・減量せず、必ず処方医にご相談ください。セルフケアと医療は対立するものではなく、両輪です。「サロンに通っているから受診しなくていい」ではなく、「医療機関で必要な対応をしながら、自律神経のケアも続けていく」という発想が、長く付き合う更年期では大切になります。

セラピスト視点|自律神経ケアでできること・できないこと

ここはセラピストとして、できるだけ正直にお伝えしておきたい部分です。

自律神経ケアでできることとしては、血圧変動に影響しやすい要素――緊張や睡眠の質、肩や首まわりのこわばり――を整える方向のサポートが挙げられます。不眠・肩こり・のぼせなど更年期の周辺症状を整えていくことで、結果として血圧管理がしやすい体調をつくっていく、というアプローチです。

一方で、できないことも明確にしておきます。サロンの施術は、高血圧そのものを「治す」ものではなく、降圧薬の代替にもなりません。家庭血圧で高い数値が続く場合は、必ず医療機関での受診を優先してください。

セラピストとして長く更年期世代の方を拝見してきた経験から感じるのは、「もとが低血圧だった方こそ、家庭血圧の習慣化と自律神経のケアをセットで考えていただきたい」ということです。数値を知ること、変化に気づくこと、その上で身体をゆるめる時間をもつこと。この3つが揃うと、更年期の血圧との付き合い方が少し変わってきます。

まとめ|知って備える更年期の血圧

更年期の血圧上昇は、決して珍しい現象ではありません。40代から50代にかけて有病率が約2.7倍に上がり、45.5%の女性が「更年期高血圧」という言葉を知らないという現実があります。背景には、エストロゲン低下によるNO産生の低下・塩分貯留・自律神経変動という3つのメカニズムが同時に進行しています。

命の母やエクオールは、降圧薬ではなく更年期全体の調整を目的としたものであることを理解した上で活用すると、過度な期待で消耗せずに続けられます。そして何より、家庭血圧の記録 → 必要に応じて医療機関 → 生活習慣と自律神経のケア、という順序で備えていくことが、更年期の血圧と上手に付き合うコツです。

「知ること自体が、更年期を穏やかに過ごす最初のセルフケア」になります。今日の健診結果に動揺している方も、まずは家庭血圧計を1台ご用意するところから始めてみてください。

よくあるご質問(FAQ)

Q: もとは低血圧でしたが、更年期で急に血圧が上がることはありますか?

A: はい、珍しいことではありません。エストロゲンには血管を広げる働きに加え、血管内皮でのNO(一酸化窒素)産生を介してナトリウム排泄にも関わるとされており、更年期で急激に低下すると、もとが低血圧の方でも血圧が上がりやすくなります。むしろ「血圧は低めだから安心」と思って暮らしてきた方ほど、変化に気づきにくいため、健康診断で初めて指摘されて驚かれるケースが目立ちます。

Q: 健診で140/90を超えていました。すぐに薬が必要ですか?

A: 一度の測定だけで判断はできません。日本高血圧学会のガイドラインでも、まずは家庭血圧での1〜2週間程度の記録を取り、平均値で判断することが推奨されています。診察室では緊張で高めに出る方も多いため、ご自宅でリラックスした状態で測った数値の方が、本来の傾向に近いと考えられます。記録を持参して医療機関にご相談ください。

Q: 命の母を飲んでも血圧が下がりません。意味がないのでしょうか?

A: 命の母Aは降圧を主目的とした薬ではなく、更年期障害に伴う諸症状を緩和する生薬製剤です。効能効果に「血圧異常」も含まれていますが、これは更年期全体を整えることで結果として安定にも寄与するという位置づけです。「血圧が下がらないから無駄」ではなく、不眠・のぼせ・肩こりなど他の症状の変化も含めて評価していくと、続ける意味が見えてきやすくなります。

Q: エクオールサプリは血圧にも効きますか?

A: エクオールやイソフラボンは、血管内皮でのNO産生を介して血管をしなやかに保つ方向で働く可能性が研究で示されています。ただし降圧薬のように直接血圧を下げるものではなく、長期的な血管ケアのサポート的な位置づけです。家庭血圧の記録や生活習慣の見直しと並行して、長い目で取り入れていくと役立てやすくなります。

Q: 家庭血圧計はどんなものを選べばよいですか?

A: 手首式よりも上腕式の血圧計が、より正確な測定に向いているとされています。朝起きてトイレを済ませた後と、夜寝る前の2回、座って1〜2分安静にしてから測定し、毎日同じ時間帯で記録するのがコツです。1週間の平均値と変動幅を見ていくと、ご自身の傾向が把握しやすくなります。

Q: サロンの自律神経ケアで血圧は下がりますか?

A: サロンの施術は、高血圧そのものを治すものでも降圧薬の代替でもありません。できるのは、血圧変動に影響しやすい緊張・睡眠の質・肩や首まわりのこわばりを整える方向のサポートや、不眠・肩こりなど更年期の周辺症状を整え、結果として血圧管理がしやすい体調をつくっていくことです。家庭血圧で160/100以上が続く場合や、頭痛・めまい・動悸を伴う場合は、必ず内科や婦人科の受診を優先してください。