「冷房対策はしているのに、夏になるとなぜか肩こりがひどくなる」――そんな経験はありませんか。
カーディガンを羽織ったり、ひざ掛けを使ったり。冷え対策はしっかりしているはずなのに、毎年7月を過ぎた頃から肩や首が重くなる。冬よりも夏のほうがつらいと感じる方は、実は少なくありません。
その原因は、冷房による冷えだけではないかもしれません。もう一つの大きな要因が 「脱水による血液粘度の上昇」 です。いわゆる「血液ドロドロ」の状態が、肩まわりの血流を悪化させている可能性があります。
この記事では、夏の肩こり悪化と脱水の関係、そして今日から始められる対策をお伝えします。冷房病の基本的な予防法についてはこちらの記事でまとめていますので、合わせてご覧ください。
夏のオフィスで”隠れ脱水”が起きやすい3つの理由
「オフィスにいて汗もかいていないのに脱水?」と思われるかもしれません。でも実は、汗をかいていなくても体の水分はじわじわと失われています。
不感蒸泄──汗をかいていなくても水分は失われている
私たちの体は、汗として自覚できなくても、皮膚の表面や呼吸を通じて常に水分を放出しています。これを 不感蒸泄(ふかんじょうせつ) といいます。常温で安静にしていても、1日に約900mlの水分が気づかないうちに失われているとされています。
エアコンで湿度が下がったオフィスでは、この蒸散がさらに加速します。「汗をかいていないから大丈夫」という感覚こそが、隠れ脱水の落とし穴です。
集中モードが水分補給を遠ざける
デスクワークに集中していると、気づけば何時間もお茶に手をつけていなかった――そんな経験、ありますよね。PC作業やオンライン会議が続くと、つい水分補給が後回しになりがちです。
サントリー食品インターナショナルの調査(2019年、全国のオフィスワーカー約1,600人対象)によると、「水」の摂取量が1日の目安(約1.2L)に届いていない人は約9割にのぼるという結果が出ています。
通勤の汗+オフィスの冷房=電解質ロスの二段構え
朝の通勤で大量に汗をかき、オフィスに着いて汗が引く。ほっとして水分を補給しないまま午前中が終わる。こうした流れは、電解質(ナトリウムやカリウムなどのミネラル)を失ったまま過ごすことになります。
2026年も厳しい暑さが予想されています。ウェザーニューズの猛暑見解2026によれば、ダブル高気圧の影響で名古屋は猛暑日が26日と予測されています。お住まいの地域により差はありますが、通勤で汗をかく季節が長く続くことは覚悟しておいたほうがよさそうです。
水分補給と電解質の関係についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
脱水が肩こりを悪化させるメカニズム
では、体の水分が不足すると、なぜ肩こりが悪化するのでしょうか。そのカギは「血液の粘度」にあります。
血漿量が減ると血液が”重く”なる
体内の水分が減ると、血液中の液体成分である血漿(けっしょう)の量が減少します。すると血液の濃度が上がり、粘り気が増してドロドロの状態に近づきます。
大塚製薬 佐賀栄養製品研究所の研究(Aviation, Space, and Environmental Medicine誌、2004年)では、低湿度の室内(湿度18〜36%)で座り続けた場合、水分補給をしなかったグループではわずか2時間で血液粘度が約9%上昇したと報告されています(健康な成人男性12名を対象とした実験)。
この実験はかなり乾燥した環境で行われたものですが、エアコンの効いたオフィスでも除湿によって湿度は下がりやすくなります。程度の差はあれ、長時間座ったまま水分を摂らない状態が続けば、同じ方向の変化は起こりうると考えられます。筋肉組織の約70〜75%は水分で構成されており、脱水の影響を受けやすい組織の一つです。
血液が”重い”と筋肉に酸素が届かない
血液の粘度が上がると、毛細血管レベルの微小循環(体の隅々をめぐる細い血管の流れ)が滞りやすくなります。すると、肩や首の筋肉に十分な酸素が届きにくくなります。
酸素が不足した筋肉は、エネルギーを作る効率が落ち、その過程で生じる不要な物質が溜まりやすくなります。さらに、血流が滞ることで老廃物の回収も遅れ、筋肉がスムーズにゆるみにくくなる。こうした悪循環が「ほぐしてもほぐれない、こわばった感じ」につながると考えられています。
冷え+脱水のダブルパンチが肩まわりの血流を止める
夏の肩こりが厄介なのは、冷房による末梢血管の収縮と脱水による血液粘度の上昇が同時に起きるところです。血管が縮んだうえに、流れる血液自体がドロドロ。冷え対策だけでは、この問題の半分しか解決できません。
肩こりと血流不足の基本的なメカニズムについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
セラピストが見る「夏に肩こりで来店される方」の共通点
セラピストとしてお伝えすると、夏場になると肩こりがつらくなって来店される方にはいくつかの共通点があります。
まず、水分摂取量を伺うと1日1L前後という方が多い印象です。「お茶やコーヒーは飲んでいるけど、お水はあまり飲んでいない」という声をよくいただきます。
また、冷房対策はされているのに、肩だけでなく首やこめかみあたりの緊張も強い傾向が見られます。冷えとは少し違う、筋肉全体がかたくこわばっているような状態です。
水分補給の見直しをお伝えして、次回の来店時に「なんとなく楽になった気がする」と変化を感じられる方もいらっしゃいます。もちろん個人差はありますし、水分補給だけですべてが解決するわけではありません。ただ、盲点になりやすいポイントだからこそ、一度見直してみる価値はあると感じています。
今日からできる「夏のデスクワーク肩」を楽にする対策5選
ここからは、デスクワーカーの方が取り入れやすい具体的な対策をご紹介します。どれも特別な道具は必要ありません。
1. 起床時にコップ1杯──寝ている間の脱水をリセット
就寝中は6〜8時間にわたって水分補給ができません。不感蒸泄で失われた水分を、朝一番に補いましょう。常温の水をコップ1杯(約200ml)飲むだけで、寝ている間の脱水をリセットする第一歩になります。
2. 60分に1回のミニ水分補給を習慣にする
一度に大量の水を飲むよりも、こまめに少量ずつ摂るほうが体に吸収されやすいとされています。スマホのリマインダーやPCの通知機能を使って、60分ごとに「水分補給タイム」を設定してみてください。1回あたり150〜200ml程度が目安です。
3. 「水だけ」ではなく電解質も一緒に摂る
水だけを大量に飲むと体液が薄まり、かえって排出が進んでしまうことがあります。麦茶にひとつまみ(親指と人差し指でつまむ程度)の塩を加えたり、経口補水液を活用したりして、電解質も一緒に補給しましょう。特に通勤で汗をかいた後や、運動後の補給には意識してみてください。
4. 肩甲骨まわりを30秒動かして血流のポンプ効果を出す
水分を摂るだけでなく、その水分を肩まわりに届けることも大切です。水分補給のタイミングで肩甲骨を大きく回したり、寄せたりする動きを30秒ほど行ってみてください。筋肉のポンプ作用で血流が促されます。
「水を飲んだら肩を回す」とセットにすると、どちらも忘れにくくなります。デスクワーク中のストレッチについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。トリガーポイント(筋肉のしこり)の予防法はこちらも参考にしてみてください。
5. 入浴で1日の血流を”リセット”する
暑い季節はシャワーだけで済ませがちですが、夏こそ湯船に浸かることをおすすめします。38〜40度のぬるめのお湯に10〜15分浸かるだけで、末梢血管が広がり全身の血流が促されます。1日の冷房環境でかたまった肩まわりの血流をリセットする時間として、ぜひ取り入れてみてください。
セルフケアで改善が難しい場合は
水分補給やストレッチを続けても肩のこわばりが改善しない場合は、筋肉の深い部分にまで緊張が及んでいるのかもしれません。
当サロンの微弱電流施術は、肩こりの改善を主な目的としたメニューです。セラピストの手を通して微弱電流を流すことで、手技だけでは届きにくい深部のこわばりにアプローチしていきます。個人差はありますが、セルフケアと組み合わせることでより変化を感じやすくなる方もいらっしゃいます。
微弱電流エステのメニュー詳細はこちらからご覧いただけます。
まとめ
夏に肩こりが悪化する原因は、冷房の冷えだけではありません。見落とされがちな 「脱水による血液粘度の上昇」 が、肩まわりの血流を悪化させ、筋肉のこわばりを強めている可能性があります。
冷え対策に加えて、こまめな水分補給と電解質の摂取を意識すること。そして肩甲骨を動かして血流を促すこと。この両面からのアプローチが、夏の肩こり対策には大切です。
まずは明日の朝、起きたらコップ1杯の水を飲むことから始めてみませんか。
なお、体の状態には個人差があります。肩こりだけでなく頭痛やしびれが続く場合は、早めに医療機関を受診されることをおすすめします。
あなたの体が本来の軽やかさを取り戻すための、小さなきっかけになれば幸いです。
よくある質問(Q&A)
Q: 夏に肩こりがひどくなるのは冷房のせいですか?
冷房による冷えも一因ですが、それだけではありません。脱水によって血液の粘度が上がり、肩まわりの筋肉に十分な酸素や栄養が届きにくくなることも大きく関わっています。冷え対策と水分補給、両方を意識することが大切です。
Q: オフィスにいて汗をかいていなくても脱水になりますか?
なります。不感蒸泄(ふかんじょうせつ)といって、汗をかいていなくても皮膚の表面や呼吸を通じて1日約900mlの水分が失われています。エアコンで湿度が下がった室内では、この蒸散がさらに加速するため注意が必要です。
Q: 1日にどのくらい水分を摂ればいいですか?
個人差はありますが、飲料からの水分摂取量は1日約1.2L以上が一つの目安です。一度に大量に飲むのではなく、60分ごとに150〜200mlずつこまめに摂るほうが体に吸収されやすいとされています。
Q: 水だけ飲んでいれば脱水対策は十分ですか?
水だけでは電解質(ナトリウムやカリウムなどのミネラル)が補えず、体液バランスが崩れることがあります。麦茶や経口補水液なども組み合わせて、水分と電解質を一緒に摂ることを心がけてみてください。
Q: デスクワーク中にできる肩こり対策はありますか?
座ったまま肩甲骨を寄せたり回したりする30秒のストレッチが手軽でおすすめです。水分補給のタイミングと合わせて「水を飲んだら肩を回す」とセットにすると、習慣化しやすくなります。
Q: 夏の肩こりと冬の肩こりは原因が違いますか?
違いがあります。冬の肩こりは寒さによる筋肉の緊張が主な原因ですが、夏は冷房による冷えに加えて脱水による血液粘度の上昇という二重の要因が特徴的です。そのため、冬とは違ったアプローチが必要になります。
Q: コーヒーやお茶は水分補給になりますか?
なります。2014年の臨床試験(PLOS ONE誌)では、適度なコーヒー摂取は脱水を引き起こさないという結果が示されています。ただし、コーヒーもお茶も水も、それだけでは電解質の補給にはなりません。大切なのはカフェインの有無よりも、電解質を含む飲み物を組み合わせることです。
Q: 肩こりがひどいときは冷やすべきですか、温めるべきですか?
冷房で冷えている状態であれば、温める方が適しています。ただし炎症を伴う痛みの場合は冷やしたほうがよいケースもあります。判断に迷う場合は、無理をせず医療機関に相談されることをおすすめします。