夕方になると前髪が束になる。朝洗ったのに、もう頭皮が脂っぽい。そんな夏に、SNSで頭皮マッサージデバイスのレビューが目に入ると、つい手が伸びます。
先に結論をお伝えします。
夏のベタつきは、皮脂が増えたからとは限りません。洗い方を変えるだけで収まることもあります。そしてデバイスを足していいかどうかは、頭皮の状態によって答えが変わります。
夏のベタつきは、皮脂が増えたからとは限らない
皮脂の出方は、皮膚の温度に左右されます。皮膚科の研究では、皮膚を温めたり冷やしたりすると、皮脂の量が1℃あたり1割ほど変わると報告されています。額の皮膚で調べたものなので、頭皮にそのまま当てはまるかは別として、目安にはなります。
ただ、この研究には続きがあります。研究者自身が、こう書き添えているのです。温度が変わると皮脂の粘り気が変わるため、採取する紙に吸われやすくなっただけかもしれない、と。
つまり、暑い日にベタつくとき、皮脂が増産されているのか、それとも同じ量の皮脂がゆるくなって広がっているのか、区別がついていない。少なくとも「暑い=皮脂が増える」と言い切るには、根拠がひとつ足りない状態です。
ここに汗が加わります。湿度が高いと汗は蒸発しきらず、頭皮に残ります。ゆるくなった皮脂と汗が混ざれば、量が同じでも濡れて見えますし、指で触れば脂っぽく感じます。名古屋は夜になっても気温が下がりにくい土地です(名古屋の夏の夜と自律神経)。頭皮が冷える時間が短ければ、それだけ皮脂はゆるいままになります。
この見立てが正しければ、対処の向きが変わります。落とす量を増やすより、頭皮の温度と汗をどうにかするほうが近い、ということです。
「洗いすぎが原因」も、そのまま当てはまるとは限らない
ベタつきを検索すると「洗いすぎが皮脂を増やす」という説明によく出会います。ただ、皮膚科の案内を読むと、少し違うことが書かれています。
アメリカ皮膚科学会は、直毛で頭皮が脂っぽい人は毎日洗ってよいとしています。フケが気になる場合についても、髪が細い人・直毛の人・頭皮が脂っぽい人は、こまめに洗うようにと案内しています。回数そのものが悪者にされているわけではないのです。
では、どこで空振りが起きるのか。回数ではなく、洗い方のほうです。
同じ案内には、シャンプーは髪全体ではなく頭皮につけると書かれています。濡れた髪はもともと傷つきやすいため、とかすならブラシではなく目の粗いコームを使い、乾かすときはタオルでこすらず包んで水気を取る、とも。ベタつくからと爪を立ててこするのは、この案内と逆の方向です。
ここから先は、セラピストとして日ごろお伝えしている手順です。
- 泡は頭皮に置き、指の腹で動かす。毛先は流れる泡にまかせる
- すすぎ残しが出やすいのは生え際と襟足。ここは時間をかけて流す
- 洗ったら乾かしてから休む
- 日中の汗は、放置せずに乾いた布で押さえる
回数を増やす前に、この4つを2週間ほど続けてみてください。それで収まるなら、そこで十分です。
デバイスを買う前に確かめたい3つの条件
そのうえで、それでも気になる方へ。頭皮マッサージデバイスを足していいかどうかは、次の3つで見分けられます。
条件1:かゆみ・フケ・赤みが揃っていないか
ベタつきに加えて、かゆみ、フケ、赤みが重なっているなら、皮膚の炎症が関係している可能性があります。この状態の頭皮に物理的な刺激を足すのは、順番が違います。デバイスは後回しにして、症状が続くようなら皮膚科にご相談ください。
条件2:抜け毛が増えていないか
抜け毛が一時的に増えているときの過ごし方として、皮膚科の情報にはあらゆる種類の頭皮マッサージを避けるよう書かれています。ブラッシングも強すぎないように、と。夏から秋は抜け毛が増えやすい時期でもあるので、ここは重なりやすいところです。
条件3:洗い方を先に整えたか
前の章の4つを試す前にデバイスを買うと、変化があってもなくても、何が効いたのか分からなくなります。洗い方、すすぎ、乾かし。この3つを整えてからでも遅くありません。
3つとも当てはまらなければ、試してみる段階です。そのうえで、2点だけ。
強さより回数を控えめに始めること。気持ちいいからと長く当てると、頭皮が赤くなることがあります。そして、購入前に説明書を確認すること。濡れた頭皮で使えるかは製品によって違いますし、持病がある方や体内に医療機器が入っている方が使用を避けるべき製品もあります。防水かどうかと合わせて、使えない条件が書かれていないかを見ておいてください。
なお、頭皮への機器のアプローチそのものについては、EMSヘッドブラシは顔のたるみに効くのかで、何がどこまで言えるのかを別途整理しています。
かゆみやフケが続くときは、皮膚科へ
ひとつ補足しておきたいことがあります。
ベタつきとフケが揃うと脂漏性皮膚炎を思い浮かべる方が多いのですが、皮膚科の情報では、この症状は冬に悪化し、夏には軽くなる傾向があるとされています。夏のベタつきをそのまま結びつけるのは早い、ということです。とはいえ、季節だけで判断できる話でもありません。
とはいえ、フケがなかなか引かない、あるいはひどくなっていくときは、皮膚科医に相談をというのが皮膚科学会の案内です。市販のケアを重ねる時間が長くなるほど、原因は分かりにくくなります。
セラピストの視点:足す前に、引いてみる
夏のベタつきに悩む方の相談を受けていて思うのは、手数が増えているということです。洗浄力の強いシャンプーに変えて、スプレーを足して、デバイスを検討する。どれも良かれと思ってのことですが、同時に動かすと、何が効いたのかが分からなくなります。
温度でゆるんだ皮脂と、蒸発しきらない汗。夏のベタつきの正体がそこにあるなら、まず減らせるのは洗い方の摩擦と、濡れたまま過ごす時間です。お金のかからないところから順に、ひとつずつ。
デバイスは、その後で選んでも間に合います。
よくある質問
Q1. 夏だけベタつきます。体質が変わったのでしょうか。
季節で変わるのは体質というより、皮膚の温度や汗の量のほうだと考えられます。皮脂は温度が上がるとゆるくなって広がりやすくなるため、量が同じでもベタついて感じられます。涼しくなって落ち着くようなら、季節の要因が大きかったと考えられます。かゆみや赤みを伴うときは、別の可能性として皮膚科にご相談ください。
Q2. 1日2回洗ってもいいですか。
皮膚科の案内にあるのは、直毛で脂っぽい頭皮なら毎日洗う場合もある、というところまでです。1日2回を勧めた記述は見当たらないので、増やす前に洗い方を見直すほうが先になります。こすり方が強いままで回数だけ増やすと、頭皮が刺激を受ける機会も増えます。
Q3. 洗浄力の強いシャンプーに変えるべきですか。
変えるとしても、ほかのものと同時に変えないでください。シャンプー、トリートメント、頭皮用の美容液を一度に入れ替えると、合わなかったときに原因が分からなくなります。ひとつずつ、2週間ほど様子を見てください。
Q4. 頭皮マッサージデバイスは毎日使っていいですか。
製品によって想定されている頻度が違うので、まずは説明書の指示に従ってください。そのうえで、頭皮に赤みが出たり、ヒリつきが残ったりするなら、いったん使うのをやめてください。頻度や強さが合っていないこともあれば、製品そのものが肌に合わないこともあります。症状が続くときは皮膚科へ。
Q5. ドライシャンプーは使ってもいいですか。
外出先で汗を押さえる用途なら選択肢になります。使う量やタイミングは製品の表示に従ってください。重ねて使って洗わない日が続くと、かえって残ったものが積み重なります。
Q6. 抜け毛が増えていますが、ベタつきも気になります。どちらを優先しますか。
抜け毛が一時的に増えているときは、頭皮マッサージや強いブラッシングを控えるよう皮膚科の情報にあります。ベタつきのケアは、洗い方とすすぎで対応してください。道具を使ったケアは、抜け毛が落ち着いてからで構いません。
Q7. 頭皮が硬いとベタつきやすいのですか。
頭皮の硬さとベタつきを直接結びつけた情報は見つかりませんでした。ベタつきは皮脂と汗の量の話なので、硬さとは分けて考えるほうが対処しやすくなります。
Q8. かゆみがあります。すぐ皮膚科に行くべきでしょうか。
かゆみに加えて、赤みやフケが続いている、あるいはひどくなっているなら、早めに相談してください。市販のケアで様子を見る期間が長引くほど、何が原因だったのか分かりにくくなります。