夏の夜、シャワーを浴びていて指に絡む髪の量に手が止まる。排水溝を見て「こんなに抜けてる?」と不安になる。そして翌日から、頭皮マッサージを念入りにする。
頭皮ケアを扱うサロンとしても、それが自然な流れだと考えていました。ところが皮膚科の情報には、こう書かれています。
抜け毛が増えている時期は、髪をやさしく扱い、強すぎるブラッシングやあらゆる種類の頭皮マッサージを避ける(出典)
「増えたから念入りに」ではなく「増えたからやさしく」だったのです。
(「首こりが原因では?」と調べて来られた方へ。その話は後半で扱います。先に、今できることから。)
抜け毛が増えている間は、道具を使ったケアを休む
ご自身がその状態にあたるかどうかの判断は、皮膚科の領域です。そのうえで、無理なく試せる進め方をひとつ挙げます。
3 週間だけ、道具を使ったケアを休む。
- 手で洗うのはそのまま続けて構いません。洗うのに必要な動作です
- 休むのは道具。頭皮用のブラシ、美容機器、シャンプーブラシも含みます
- 始める前に、分け目の写真を 1 枚。同じ場所・同じ分け目・同じ距離で、朝の洗面所など時間帯も揃えて。光が変わると見え方が変わるので、比べられない写真は撮らなかったのと同じです
- 3 週間後にもう 1 枚撮って、並べて見ます
なぜ 3 週間か。医学的な根拠のある数字ではなく、続けやすさから置いた目安です。1 週間では写真で比べても分からず、長すぎると続きません。
休むことによる不都合は小さいはずです。迷うなら、休む方を選んでおくのが無難です。
「強い」の線引き
- 避けたいこと:指や道具で頭皮をゴリゴリ動かす、引っぱる、押し込む
- やめなくていいこと:指の腹でシャンプーする
セラピストの視点:セルフケアに足りない「安全弁」
施術では、いきなり希望の強さから入らず、最初は弱めに始めて、呼吸や肩の力みを見ながら少しずつ上げ、ちょうどいいところで止めます。触られる側は「少し強いかも」と思っても、案外そのまま我慢してしまうからです。
ご自宅のケアでは、この「下から上げる」工程が抜け落ちます。いつも通りの強さから始まるからです。しかも、
- 手は疲れると自然に力が抜けますが、道具は疲れません
- 毎日同じ刺激を受けていると、同じ強さでは物足りなくなっていきます
- 後頭部や首の付け根は鏡でも見えない場所です。見えない場所の力加減は、誰でも雑になります
施術をしていて感じるのは、こりが強い方ほど「もっと強く」と希望されるということです。つらいから、強い刺激で届かせたくなる。抜け毛が増えたときに念入りに揉んでしまうのも、おそらく同じ気持ちです。
「やさしくしているつもり」が信用できないのは、意思の問題ではなく構造の問題です。加減でがんばるより、期間で区切って休む方が確実です。
美容室やヘッドスパは、先に相談を
引用した皮膚科の情報は、頭皮マッサージ全般を避けるよう案内しています。ヘッドスパもいったん見合わせるのが無難です。
すでに予約が入っているなら、当日に「今、抜け毛が増えている」と伝えて、頭皮マッサージを行わない内容に変更できるか相談してみてください。カットやカラーは、これまでどおりで大丈夫です。
振り返るのは今ではなく、2〜4 か月前
きっかけがあって抜け毛が増える場合、実際に増えたと気づくのは、そのきっかけから 2〜4 か月後だとされています(出典)。
つまり、今の生活を振り返っても見つからないことがあります。思い出すのは春先から初夏にかけて。出産、急なダイエット、高い熱、手術、薬を始めたりやめたり。心当たりがあれば、受診するときにそのまま伝えてください。
「半年〜9 か月」が当てはまるのは、どんなときか
季節や体調の変化で一時的に抜け毛が増える状態は「休止期脱毛」と呼ばれています。名前があると調べやすくなります。
- 健康な方でも、髪は 1 日に 50〜100 本ほど自然に抜けるとされています(目安)
- 洗わない日があればその分がまとまって出るので、排水溝で見る量は実際より多く見えます
- 増えやすいのは夏の終わりから秋のはじめだと海外の調査で報告されています
そしていちばん使えるのがこれです。きっかけが取り除かれていれば、多くは半年から 9 か月ほどで落ち着いていくとされています。
ただし「どの抜け毛も 9 か月待てばいい」という話ではなく、きっかけが続けば長引きますし、休止期脱毛ではない場合もあります。減る気配がないまま数か月が過ぎるなら、待たずに相談してください。
セラピストの視点:「首こりが原因」の裏付けは見つからなかった
施術中に「なんかいい方法ないですか」と聞かれることがあります。自宅で頭皮の道具を使っている方から、使い方を尋ねられることも。そのたび、うまく答えられずにいました。
「抜け毛の原因は首こり」という話をよく見かけますし、首や肩をほぐすサロンにとっては都合のいい話です。ただ、調べてもそこをつないだ研究は出てきませんでした。言えたら楽なのですが、言えないものは言えません。
はっきり書いておきます。当サロンで抜け毛に対応できることはありません。 オプションを含めて、扱える範囲の外です。だからこの記事には、調べたことをそのまま載せています。
そのうえで、首こりのケアをやめる必要はありません。頭が重い、夕方に集中できない。首こりはそれ自体がつらいものです。髪のためではなく、首のために(デスクワークの首こり対策)。
皮膚科では、こう伝えてみてください
「抜け毛くらいで行っていいのかな」と迷う方は多いと思います。原因が早く分かるほど手が打ちやすくなるので、迷うなら受診してください。持っていくものは 3 つ。
- いつごろから増えたと感じるか
- 2〜4 か月前に、出産、急なダイエット、発熱、手術、薬の開始や中止がなかったか
- 分け目の写真
そのうえで「血液で調べておいた方がいいことはありますか」と聞いてみてください。鉄や甲状腺の状態は、触っても見ても分からない領域です。40 代以降で疲れやすさや寝つきの悪さも重なっているなら、そのことも伝えておくと役立ちます。
急に大量に抜ける、分け目の見え方が変わる、頭皮に赤みや痛みがある。こうしたときは、期間を数えずに受診してください。
今日からできること
抜け毛が気になる方への助言として、皮膚科の情報にはこう書かれていました。
- やさしいシャンプーを使い、洗うたびにコンディショナーをつける
- ブラッシングはやさしく、髪を整えるのに必要な分だけ
- コテやアイロンは、特別な日だけに
- 自分で染めるカラー、パーマ、縮毛矯正はいったん止める
- 引っぱる髪型は抜け毛の原因になる。痛いと感じる髪型は、きつすぎる
全部やろうとしなくて大丈夫です。優先するなら「引っぱる髪型をやめる」と「コテを特別な日だけにする」の 2 つ。足すケアより引くケアの方が、確実です。
なお、抜けた本数を毎日数えるのはおすすめしません。日によって波があるので、一喜一憂して終わります。それと、分け目やつむじは日焼けもします。
まとめ:「念入りに」より「やさしく」
- 「増えたから念入りに」ではなく「増えたからやさしく」
- 3 週間だけ道具を休み、前後で分け目の写真を撮って比べる
- 手で洗うのは、そのまま続けて構いません
- ヘッドスパの予約があるなら、頭皮マッサージなしに変更できるか相談を
- 振り返るのは今ではなく 2〜4 か月前
- きっかけが取れていれば半年〜9 か月が目安。減る気配がなければ相談を
髪のことは髪の専門家に、首や肩のことは当サロンに。そう分けていただければと思います。
よくある質問(FAQ)
Q1: 夏の終わりに抜け毛が増えるのは、普通のことですか?
A: 季節としてそういう時期にあたり、夏の終わりから秋のはじめに増えやすいことが海外の調査で報告されています。ただし、きっかけがあって増えている場合は、その 2〜4 か月後に気づくとされています。春先から初夏に体の大きな変化がなかったか、振り返ってみてください。
Q2: 頭皮用のブラシや美容機器は、もう使えないのですか?
A: 使えなくなるわけではありません。機器そのものが抜け毛を悪くするという話でもなく、そこを調べた研究も出てきませんでした。ただ、抜け毛が増えている時期は強いブラッシングや頭皮マッサージを避けるようにと皮膚科の情報にあります。3 週間ほど休んで、前後で写真を撮り、落ち着いていれば戻すのがひとつの目安です。
Q3: 抜け毛が増えていますが、ヘアカラーの予約が入っています。どうすればいいですか?
A: カラーそのものを避ける必要はないと思いますが、頭皮に赤みやヒリつきがあるなら日程をずらすか、当日に状態を担当の方へ伝えてご相談ください。あわせて、頭皮マッサージを行わない内容に変更できるかも聞いてみてください。なお皮膚科の情報では、自分で染めるカラーやパーマ、縮毛矯正はいったん止めることがすすめられていました。
Q4: 首こりをほぐせば抜け毛も改善しますか?
A: 首こりと抜け毛をつないだ研究は出てきませんでした。ですので、抜け毛を目的に首をほぐすことはおすすめできません。ただ、首こりそのものがつらいのであれば、それは十分にケアする理由になります。髪のためではなく首のために、と分けて考えてみてください。
Q5: 抜け毛が増えたら、まずシャンプーを変えるべきですか?
A: 変える前に、洗い方を見ていただくといいかもしれません。爪を立てていないか、すすぎ残しがないか。それが原因なら、変えても解決しません。変えるときは、シャンプー・トリートメント・頭皮用美容液を同時に入れ替えず、ひとつずつに。合わなかったときに原因が分からなくなります。赤みや湿疹が続くときは皮膚科にご相談ください。