9月が目の前だというのに、体が重い。夏季休暇も取った、お盆も休んだ。それなのに、朝起きた時点でもう疲れている。
この時期、そう感じている方は少なくありません。ご自身の体力や気力の問題だと結論づける前に、確かめておきたいことがあります。
休みが足りなかったのではなく、休みの中身と、休んでいる間の体の条件が揃っていなかった。まず疑ってみる価値があるのは、そちらです。この記事では、疲れが残っている場所を3つに切り分けたうえで、残暑のうちに手をつける順番をお伝えします。なお、疲れが続く背景に体の病気が隠れていることもあります。受診を考える目安は記事の後半にまとめました。
去年より涼しい夏だったのに、なぜ抜けないのか
まず、意外に思われるかもしれない数字から。
名古屋の8月の記録を1日ずつ見ていくと、今年は28日までのうち、その日いちばん涼しい時間でも気温が25℃を下回らなかった日が19日ありました。3日に2日は熱帯夜だった計算になります。
ところが去年の同じ期間は、28日すべてが熱帯夜でした。最高気温が35℃を超えた日も、今年の13日に対して22日あります。暑さの厳しさで言えば、去年のほうが上だったことになります。
それでも今年、疲れが抜けないと感じている。だとすれば、原因を暑さの強さだけに求めても、答えは出てきません。
とはいえ、今年が楽な夏だったわけでもありません。8月の平均気温は、平年値の28.2℃に対して29℃台で推移しています(8月28日までの速報値)。冷房を使わなければ寝室の温度が下がりにくい夜が、平年より多かったことになります。
そして、この暑さはまだ終わりません。9月の1か月予報では、東日本・西日本ともに気温は平年より高い見込みとされ、9月に入ってすぐの時期には35℃以上になる所もあると伝えられています。
名古屋の9月は、平年なら平均気温が24.5℃まで下がります。8月より4℃近く低い月ですから、例年ならこの下がり方に助けられて、暑さによる負担は自然に軽くなっていきます。今年は、その助けがまだ届いていません。
つまり、夏の疲れを持ったまま、夏がもう一度続いている。しかも疲れの理由は、暑さの強さだけではなさそうです。次の章から、その中身を見ていきます。
「休んだのに抜けない」は、休養が半分だけだったから
厚生労働省の健康日本21では、休養には2つの側面があると説明されています。
ひとつは「休む」こと。仕事や活動で生じた心身の疲労を回復し、元の活力ある状態に戻す側面です。もうひとつは「養う」こと。明日に向かって鋭気を養い、身体的・精神的・社会的な健康能力を高める側面を指します。
そのうえで、こう書かれています。休養のための時間を取っても、単にごろ寝をして過ごすだけでは真の「休養」にはならない、と。
お盆の過ごし方を思い返してみてください。移動があり、家族や親族に会い、気を遣い、帰ってきた翌日には仕事が始まった。カレンダーの上では確かに休みでした。けれど「休む」も「養う」も、実際にはほとんど入っていなかったのではないでしょうか。
長さは足りていたのに回復しなかった。理由のひとつは、ここにあると考えられます。
疲れが残っている場所を、3つに切り分ける
「疲れが取れない」とひとくくりにしていると、打つ手が決まりません。次の3つのうち、どれが自分に当てはまるかを見てください。複数当てはまる方が多いので、その場合は上から順に手をつけます。
1. 眠りの質:夏は、そもそも眠りが続きにくい季節
厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023には、夏季は他の季節に比べて睡眠時間が短く、寝つきや眠りの持続が難しくなると書かれています。理由として挙げられているのは、日の長さと、高温多湿な寝室環境です。
さらに、夏の寝室の室温が上がると睡眠時間が短くなり、睡眠の効率も下がることが、実際の生活の中での調査で報告されているとあります。そのうえでガイドは、夏の寝室はエアコンを用いて涼しく維持することが重要と考えられる、としています。
このガイドはもうひとつ、「睡眠休養感」という言葉を使っています。睡眠で休養がとれている感覚、つまり朝起きたときに「休めた」と感じられるかどうかのことです。時間の長さとは別に、この感覚が確保されているかどうかが健康と関わることが示されています。「7時間寝たのに休んだ気がしない」という実感には、ちゃんと名前がついているわけです。
当てはまるサイン
- 朝の目覚めが重く、起きた時点ですでに疲れている
- 夜中に一度は目が覚める
- 寝汗で寝具が湿っている
手をつける順番
「もったいない」「体に悪そう」という理由で夜中にエアコンを切っている場合は、まずそこを変えます。ガイドが求めているのは室温を涼しく保つことなので、タイマーで切って明け方に暑くなるより、弱めの設定で朝まで動かしておくほうが目的に合います。ただし冷やしすぎと、風が体に直接当たる状態は避けてください。
暑さで眠りが浅くなっているときの体の中で何が起きているかは、名古屋の熱帯夜と夜間熱中症の記事でも詳しくお伝えしています。
2. 温度差:往復するたびに、静かに消耗している
冷房の効いた室内と、猛烈に暑い屋外。この差を行き来するたびに、体は血管を締めたり広げたりして体温を調節します。これはエネルギーを使う作業で、担っているのは自律神経です。
名古屋では、8月28日までに最高気温が35℃以上になった日が13日ありました。そういう日に外へ出て、冷房の室内へ戻る。1回ごとの負担は小さくても、夏のあいだ繰り返されます。夏の終わりのだるさが「何もしていないのに疲れている」という形で出てくる背景には、この作業が自覚のないところで続いていることがあると考えられます。
当てはまるサイン
- 夕方になると頭が重くなる
- 室内にいるのに手足が冷える
- 肩や首がこわばり、ほぐしてもすぐ戻る
手をつける順番
羽織ものと、足元です。冷房対策というと上半身に意識が向きがちですが、座っている時間が長いほど、冷たい空気は足元にたまります。足元の冷えが気になるなら、オフィスでは靴下やひざ掛けで調整してみてください。
冷房による不調のメカニズムは冷房病の予防とセルフケアの記事に、夏の肩こりに脱水が関わっている場合については夏の脱水と肩こりの記事にまとめています。
3. 休みの中身:「養う」が入っていたか
3つ目が、いちばん見落とされやすいところです。
帰省、来客の対応、家族との予定。これらは「人に合わせる時間」でもあります。人と会うこと自体が休養になる方もいますが、気を配り続ける時間が長ければ、体は座っていても神経のほうは休んでいません。予定が詰まっていた休みほど、終わったあとに疲れが残ったように感じられる方がいるのは、そのためだと考えられます。
当てはまるサイン
- 休み中に、一人で過ごした時間が思い出せない
- 休み明けのほうが、休む前より気が重い
- 「何もしなかった日」が1日もなかった
手をつける順番
1日まるごと空ける必要はありません。健康日本21は、リラックスしたり自分を見つめたりする時間を1日のなかにつくること、趣味やスポーツなどで休日を積極的に過ごすことが、真の休養につながるとしています。「積極的休養」として広く普及すべきだ、とされている考え方です。
セラピストの見方としては、ここに「誰とも予定を合わせない」という条件を足すと、実行しやすくなります。目安として30分。それだけでも「養う」側に入ります。
今日から戻す:朝と夜、ひとつずつ
3つとも同時に始めなくて構いません。当てはまった項目の上から順に、朝と夜でひとつずつ動かします。
| 切り分け | 朝にすること | 夜にすること |
|---|---|---|
| 1. 眠りの質 | 起きたらカーテンを開け、窓ぎわで少し過ごす | 明け方に暑くならないようエアコンを使う |
| 2. 温度差 | 羽織ものと靴下をカバンに入れてから家を出る | 水分を取ってから、湯船に浸かる |
| 3. 休みの中身 | 出社前に、今日やめることをひとつ決める | 誰とも予定を合わせない30分を確保する |
増やすのは1週間にひとつまで。できない日があっても、翌日に戻せば足ります。
朝の光については、睡眠ガイドにも「朝目覚めたら部屋に朝日を取り入れ、日中はできるだけ日光を浴びる」ようにと書かれています。窓を開ける必要はなく、カーテンを開けるだけで構いません。
湯船は、まだ暑い時期なので無理をしないでください。入浴の前後に水分を取り、のぼせや立ちくらみを感じたらすぐに上がります。温度は目安として熱すぎないぬるめが向いています。詳しくは入浴温度と自律神経の記事をご覧ください。お住まいの地域や、その日の気温によって心地よい温度は変わりますので、調整してください。
セラピストの視点:戻すのは体力ではなく、体温を扱う力
夏のあいだ、体は「熱を逃がす」ことにずっと使われてきました。汗をかき、血管を広げ、体の内側の温度を下げる。この方向にばかり働いてきた体は、気温が下がり始めたとき、今度は「熱を保つ」側へ切り替える必要があります。
ここからはセラピストとしての見立てになりますが、秋の入り口で不調が出る背景には、この切り替えの遅れがあると考えられます。夏の疲れを持ち越したままだと、切り替えに使える余力も残っていません。朝晩の気温差が広がってからの不調については、秋バテと気温差の記事でも触れています。
だからこそ、涼しくなってからではなく、まだ暑い今のうちに、眠りと温度差の2つを戻しておく。それが9月への引き継ぎになります。
変化の出方には個人差がありますので、日ごとの調子で判断しないでください。回復にかかる期間を一律に示すことはできませんが、2週間ほど区切って、朝の目覚めの重さがどう動いたかを振り返ると、続ける価値があるかどうかを自分で決められます。
セルフケアより先に、受診を考えたほうがよいとき
次のような様子があるときは、生活の工夫より先に医療機関へご相談ください。期間を待つ必要はありません。
- 食欲が戻らない、または意図しない体重減少がある
- 微熱が続く、または息切れや強い動悸がある
- 水分が取りにくい、急に具合が悪くなった
- 睡眠時間は足りているのに、休めた感じが戻らない
- 気分の落ち込みが続き、これまで楽しめたことが楽しめない
4つ目については、睡眠ガイドにも書かれています。睡眠時間を十分に確保しているのに休養感が低下している場合は、医療機関で原因を詳しく調べてもらう必要がある、と。眠りの後ろに、別の理由が隠れていることがあるためです。
夏の疲れとよく似た形で始まる不調は、ほかにもあります。自己判断で様子を見る期間が長引くほど、原因が分かりにくくなります。
まとめ:涼しくなるのを待たず、「養う」をひとつ戻す
休みは取ったのに疲れが抜けない。去年より涼しい夏だったのに抜けない。その背景として考えられるのは、次の3つです。
- 眠りの質:夏は眠りが続きにくい季節で、寝室の暑さがそれを強める
- 温度差:室内と屋外の往復で、自律神経が静かに消耗している
- 休みの中身:「休む」はあっても「養う」が入っていなかった
そして今年は、涼しくなるまでの猶予がまだありません。9月に入っても平年より高い気温が続く見込みである以上、体が勝手に回復してくれる期間を当てにしないほうが確実です。
朝と夜にひとつずつ。まずは今夜、明け方に暑くならない寝室をつくるところから始めてみてください。
よくある質問
Q1. 休みは十分取ったのに疲れが抜けません。病気の可能性はありますか。
夏の終わりのだるさは、暑さによる睡眠の質の低下と、温度差による消耗で説明がつくこともあります。ただし疲労は、貧血や甲状腺の病気、感染症、心の不調などでも起こります。食欲が戻らない、意図しない体重減少がある、微熱や息切れがあるといった場合は、期間を待たずに内科で相談してください。
Q2. エアコンを朝までつけて眠ると、体が冷えて逆効果になりませんか。
厚生労働省の睡眠ガイドは、夏の寝室はエアコンを用いて涼しく維持することが重要と考えられる、としています。連続運転そのものを求めているわけではないので、明け方に室温が上がらない使い方であれば方法は問いません。冷えが気になる場合は、設定温度を下げるのではなく寝具や寝間着で調整する、風が直接体に当たらない向きにする、といった調整の仕方があります。
Q3. 夏はシャワーだけで済ませています。湯船に浸かる必要はありますか。
暑い時期にシャワーだけになるのは自然なことです。ただ、冷房の中で過ごす時間が長い方ほど、汗をかく機会が減っています。暑さに体を慣らす方法をまとめた熱中症ゼロへの解説では、シャワーで済ませず湯船に入ること、頻度は2日に1回程度を目安とすることが挙げられています。同じ解説が、入浴の前後に十分な水分と適度な塩分を取るようにも求めています。のぼせやすい方、体調がすぐれない方は無理をしないでください。
Q4. 週末に寝だめをすれば取り戻せますか。
睡眠ガイドには、眠りを「ためる」ことは実際にはできない、と書かれています。休日に長時間の睡眠が必要な状態は、平日の睡眠時間が足りていないサインとして扱われています。休日の起床時刻が大きく後ろにずれると体内時計が混乱するため、まず平日の睡眠時間を確保するほうが確実です。
Q5. 疲れが抜けるまで、どのくらいかかりますか。
回復にかかる期間は、原因も生活も人によって違うため、一律の目安をお示しすることはできません。そのうえで、振り返りの区切りとして2週間を提案しています。朝の目覚めの重さや夕方の頭の重さを、日ごとの気分ではなく週単位で見ていくと、続ける価値があるかどうかを判断しやすくなります。変化がないまま続くようなら、医療機関にご相談ください。
Q6. 食欲がなく、そうめんやアイスで済ませる日が続いています。
食べられるものを食べて構いません。無理に品数を増やすより、水分とエネルギーを少量ずつでも取れている状態を保つほうが先です。ただし、食欲が戻らない、意図しない体重減少がある、水分も取りにくいという場合は、期間を待たずに医療機関にご相談ください。
Q7. 9月に入れば自然に回復しますか。
例年であれば、9月は平均気温が下がるぶん、暑さによる負担は軽くなっていきます。ただし今年の1か月予報では、9月に入っても平年より高い気温が続く見込みとされ、9月初めには35℃以上になる所もあると伝えられています。負担が軽くなる時期は後ろにずれると考えられるため、暑いうちから眠りと温度差の対策を進めておくほうが確実です。
Q8. 3つとも当てはまりました。どれから始めればよいですか。
眠りの質からをおすすめします。寝室の環境は自分で変えやすく、変えた結果が朝の感覚として翌日に返ってくるため、続けられるかどうかを判断しやすいからです。今夜、明け方に暑くならない寝室をつくる。朝、カーテンを開けて光を浴びる。この2つを1週間続けてから、次に進んでください。