
最近、夫の様子がなんだか違う…疲れやすくなったり、イライラが増えたり、以前のような活力を感じられない。そんな変化に戸惑っている妻は少なくありません。実はその変化、男性更年期(LOH 症候群)の可能性があります。女性の更年期はよく知られていますが、男性にも更年期があることはまだ十分に認知されていません。夫婦で正しい知識を共有し、一緒に向き合うことで、この時期をより良い関係構築の機会に変えることができます。
男性更年期(LOH 症候群)とは?基礎知識を理解する
テストステロン低下がもたらす変化
男性更年期は医学的に「LOH 症候群(Late-onset Hypogonadism)」と呼ばれ、男性ホルモンであるテストステロンの低下によって引き起こされます。テストステロンは男性の活力、筋力、性機能、精神的な安定に深く関わるホルモンです。
40 代後半から 50 代にかけて、このテストステロンが徐々に減少することで、さまざまな症状が現れます。個人差はありますが、成人男性のテストステロン値は年齢とともに年 1〜2%ずつ低下すると言われています。
女性更年期との違いを知る
女性の更年期が閉経を境に急激にホルモンが変化するのに対し、男性更年期は緩やかに進行します。そのため、本人も周囲も気づきにくく、単なる「加齢」や「疲れ」として見過ごされがちです。
また、女性の更年期が 50 歳前後に集中するのに対し、男性更年期は 40 代から 70 代まで幅広い年齢で起こる可能性があります。症状の出方も個人差が大きく、まったく症状が出ない人もいれば、日常生活に支障をきたすほど重い症状に悩む人もいます。
妻が気づきやすい男性更年期のサイン
感情面の変化をチェック
夫の感情面の変化は、一緒に生活している妻が最も気づきやすいサインです。以下のような変化が見られたら、男性更年期の可能性を考えてみましょう。
イライラや怒りっぽさの増加 些細なことで怒るようになった、以前は気にしなかったことにイライラする、感情のコントロールが難しくなったなど、感情の起伏が激しくなることがあります。
意欲や興味の低下 趣味に興味を示さなくなった、休日も家でゴロゴロしている、新しいことにチャレンジしなくなったなど、全般的な意欲の低下が見られることがあります。
不安感や落ち込み 将来への不安を口にするようになった、自信を失ったような発言が増えた、気分が沈みがちになったなど、精神的な不安定さが現れることもあります。
身体面の変化を観察
身体的な症状も男性更年期の重要なサインです。日常生活の中で以下のような変化に注目してみてください。
疲労感と体力低下 「すぐに疲れる」「朝起きるのがつらい」「階段を上るのがしんどい」など、体力の低下を訴えることが増えます。週末に寝てばかりいる、外出を避けるようになったなども注意すべきサインです。
睡眠の質の変化 寝つきが悪くなった、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまう、いびきが大きくなったなど、睡眠に関する問題が出てくることがあります。
身体的な不調 肩こりや腰痛の悪化、ほてりや発汗、めまい、動悸など、自律神経系の症状が現れることもあります。
行動面の変化に注目
仕事への態度の変化 集中力が続かない、決断力が鈍る、ミスが増える、残業を避けるようになるなど、仕事のパフォーマンスに影響が出ることがあります。
人間関係の変化 友人との付き合いを避ける、家族との会話が減る、一人でいることを好むようになるなど、社交性の低下が見られることもあります。
【チェックリスト】夫の変化を確認する 10 項目
以下の項目で 3 つ以上当てはまる場合は、男性更年期の可能性を考えてみましょう。
□ 以前より疲れやすく、回復に時間がかかる
□ イライラしやすく、些細なことで怒るようになった
□ 趣味や好きだったことへの興味が薄れた
□ 性欲が低下した、または性機能に不安を感じている
□ 筋力の低下を感じる、体型が変わってきた
□ 睡眠の質が悪くなった(寝つきが悪い、中途覚醒など)
□ 仕事への意欲が低下し、集中力が続かない
□ 気分が落ち込みやすく、不安を感じることが増えた
□ ほてりや発汗、動悸などの症状がある
□ 記憶力や判断力の低下を感じる
夫婦で向き合う男性更年期:妻ができるサポート方法
理解を示すコミュニケーション術
男性更年期の夫と向き合う上で最も大切なのは、症状を理解し、受け入れる姿勢を示すことです。
責めない、比較しない 「昔はもっと元気だったのに」「他の人はもっと頑張っている」といった比較や、「だらしない」「怠けている」といった批判的な言葉は避けましょう。本人も自分の変化に戸惑い、苦しんでいる可能性があります。
共感的な声かけ 「最近疲れているみたいだけど、大丈夫?」「何か心配事があるなら話を聞くよ」といった、相手を気遣う言葉をかけることが大切です。無理に話を聞き出そうとせず、相手のペースを尊重しましょう。
小さな変化を認める 「今日は顔色が良いね」「最近よく眠れているみたいで安心した」など、ポジティブな変化に気づいたら積極的に伝えましょう。小さな励ましが、夫の自信回復につながります。
専門医受診への優しい促し方
男性は医療機関を受診することに抵抗を感じる傾向があります。以下のような方法で、自然に受診を促してみましょう。
健康診断の延長として提案 「健康診断のついでにホルモン値も調べてもらったら?」「会社の健診では分からないこともあるから、詳しく調べてみない?」など、健康管理の一環として提案すると受け入れやすくなります。
具体的な情報を提供 「男性更年期外来」「メンズヘルス外来」といった専門外来があることを伝え、泌尿器科や内科でも相談できることを情報提供しましょう。事前に病院の情報を調べておくと、スムーズに受診につながります。
一緒に行くことを提案 「私も一緒に行くから」「夫婦で健康チェックをしよう」といった形で、一人で行くプレッシャーを軽減することも効果的です。
生活習慣改善を夫婦で取り組む
男性更年期の症状改善には、生活習慣の見直しが重要です。夫婦で一緒に取り組むことで、継続しやすくなります。
運動習慣の共有 週末の散歩やウォーキング、軽いジョギングなど、夫婦で楽しめる運動を始めてみましょう。筋力トレーニングはテストステロン値の上昇に効果的です。「健康のために一緒に始めよう」という形で誘うと、自然に始められます。
食事の工夫 亜鉛(牡蠣、レバー、牛肉)、ビタミン D(魚類、きのこ)、良質なタンパク質(大豆製品、鶏肉)を意識的に取り入れましょう。「最近こんな料理を覚えたから試してみて」という形で、自然に食生活を改善できます。
ストレス軽減の環境づくり 家庭を安らげる空間にすることが大切です。仕事の話を無理に聞き出そうとせず、リラックスできる時間を大切にしましょう。趣味の時間を尊重し、一人の時間も必要であることを理解することが重要です。
男性更年期を支える具体的な生活改善法
睡眠の質を高める工夫
質の良い睡眠はホルモンバランスの改善に欠かせません。
寝室環境の整備 適度な暗さと静けさを保ち、室温は 20〜22 度程度に設定しましょう。寝具も体に合ったものを選び、快適な睡眠環境を整えることが大切です。
就寝前のルーティン 寝る 1 時間前からスマートフォンやパソコンを控え、軽いストレッチや読書でリラックスする時間を作りましょう。入浴は就寝の 90 分前に済ませると、体温の変化により入眠しやすくなります。
栄養面でのサポート
朝食を充実させる 朝食をしっかり摂ることで、1 日のエネルギーレベルが安定します。タンパク質を含む食事(卵、納豆、ヨーグルトなど)を意識しましょう。
間食の工夫 ナッツ類やダークチョコレートなど、栄養価の高い間食を用意しておくと、エネルギー補給に役立ちます。
夫婦のコミュニケーション時間を大切に
定期的な会話の時間 週に 1 回は夫婦でゆっくり話す時間を作りましょう。お茶を飲みながら、その週の出来事を共有するだけでも、心の距離が縮まります。
共通の趣味を見つける 新しい趣味を一緒に始めることで、会話のきっかけが増え、生活に張りが出ます。料理教室、ガーデニング、写真撮影など、二人で楽しめることを探してみましょう。
専門的なケアも選択肢の一つ
医療機関での治療
男性更年期の症状が重い場合は、医療機関での治療が必要になることもあります。泌尿器科や内科、男性更年期外来では、血液検査でテストステロン値を測定し、必要に応じてホルモン補充療法などの治療を受けることができます。
治療を受けることは恥ずかしいことではありません。適切な治療により、症状が改善し、生活の質が向上する可能性があります。
微弱電流エステで自律神経のバランスを整えることも、男性更年期の症状緩和に役立ちます。マッサージや整体、鍼灸などのリラクゼーションケアも、身体の緊張をほぐし、ストレスを軽減する効果があります。
よくある質問
Q: 男性更年期は何歳頃から始まりますか?
A: 男性更年期は個人差が大きく、早い人では 40 代前半から、一般的には 40 代後半〜50 代で症状が現れることが多いです。ただし、60 代や 70 代で症状が出る人もいます。女性の更年期のように明確な時期がないため、症状に気づいたら早めに対処することが大切です。
Q: 男性更年期の症状はどのくらい続きますか?
A: 症状の期間も個人差が大きく、数ヶ月で改善する人もいれば、数年続く人もいます。適切な治療や生活習慣の改善により、症状を軽減することができます。放置すると症状が長期化する可能性があるため、早めの対処が重要です。
Q: 夫が病院に行きたがらない場合、どうすればいいですか?
A: まずは健康診断の一環として提案したり、「私も一緒に健康チェックを受けたい」という形で誘ってみましょう。また、男性更年期に関する情報を自然に共有し、「こういう治療法もあるんだって」と知識を提供することも効果的です。焦らず、本人のペースを尊重しながら、少しずつ理解を深めてもらうことが大切です。
Q: 食事で特に気をつけるべきポイントは?
A: テストステロンの生成に必要な亜鉛を多く含む食品(牡蠣、牛肉、レバー、ナッツ類)を積極的に取り入れましょう。また、ビタミン D(魚類、きのこ、卵)、良質なタンパク質(大豆製品、鶏肉、魚)も重要です。逆に、過度な飲酒や高脂肪食は避け、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
Q: 運動はどの程度すればいいですか?
A: 週 3〜4 回、1 回 30 分程度の有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング)がおすすめです。また、週 2 回程度の筋力トレーニングを加えると、テストステロン値の改善により効果的です。無理のない範囲で、楽しみながら続けることが重要です。夫婦で一緒に取り組むと継続しやすくなります。
まとめ
男性更年期は、決して珍しいことではありません。多くの男性が経験する自然な変化の一つです。大切なのは、夫婦でこの変化を理解し、支え合いながら乗り越えていくことです。
妻として夫の変化に気づき、理解を示すことで、夫は孤独感から解放され、前向きに対処する勇気を持てるようになります。この時期を夫婦の絆を深める機会と捉え、お互いの健康を気遣いながら、より良い関係を築いていきましょう。
まずは今日から、夫の様子を優しく観察し、小さな変化に気づいたら温かい言葉をかけることから始めてみてください。夫婦で手を取り合って歩んでいけば、必ずこの時期を乗り越えることができます。